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「橘さんは家の事情でつい先日カナダから帰ってきたばかりです。彼女が困っているのを見つけたら手を貸してあげてくださいね」
香穂先生が呆けている俺たちにそう言うが、多分みんなそれどころじゃないだろう。
しかし俺たちが言葉を発せずにいるところに、奴は動き始めた。
「俺と付き合ってください」
『────はっ。瀬山ぁぁあああっ! 貴様そこで何をしている────っ!!』
全人類の敵、瀬山が何と転校生に告白をしたのだ。
無意識のうちに俺たちは両手に文房具を構えていた。
「かの偉人が残した名言だ。『攻撃は最大の防御』だと」
教壇の前──転校生の目の前──で膝をつきながら瀬山は含んだ笑みを浮かべて俺たちを一瞥した。
くそっ、腹が立ってきた…。こうなったら…
「チーム四組。これより瀬山抹殺計画を実行する。準備はいいか?」
『おっしゃぁぁぁあああっ! 全員リロードしろ! 奴を生かすなぁぁあああっ!』
こいつを春原みたいな顔面にしてやる!!
「甘いな…今の俺は誰にも止められな────」
それは瀬山が高笑いしようと立ち上がった瞬間のことだった。
ズゴォンッ!!
『なん…だと…っ!? 目標が…消えた…!?』
凄まじい轟音と共に瀬山は姿を消した。
どこだ…どこに行きやがった…っ!
急いで瀬山を探しに目を泳がし探し回っていた時、俺たちの耳に透き通った声が届いた。
「──あ、ごめん。ちょっと気持ち悪かったから…」
その時俺たちは悟った。
『(こいつ………できる…っ!)』
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