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「先生、何ですか?」
「あ、蒼井さん。実はあなたに頼みたいことがありまして」
「頼みたいこと?」
「はい。この子にこの学園を案内してもらいたくて。頼りになるのはあなたぐらいなんですよ」
「学園を案内って…先生、正気ですか?」
もし正気だとしたらこの人はものすごい無謀なことを言っている。
この学園がどれだけ広いと思ってるんだよ。
「失礼です。私は真面目に話していますよ?」
「ですよねー」
「と、いうわけでよろしくお願いしますね?」
「……………はい」
そう返事をすると、先生は軽快な足取りでどこかへ行ってしまった。
必然的に取り残される俺と転校生の橘飛鳥。
「…………………」
「…………………」
気まずい。非常に気まずい。
そんな気まずい雰囲気がしばらく続いたが、それは授業開始のチャイムによって断ち切られた。
「授業の準備…するか」
「……………そうね」
目も合わせずに返事を返し、橘飛鳥はそそくさと自分の席に戻っていった。
そしてそれとは入れ替わりで瀬山と永村が話しかけてくる。
「おぅどうした幸人。顔色が悪いぜ?」
「お前ほどじゃねぇよ」
「何言ってんだ。俺は元気だぜ?」
「間違えた。顔が気持ち悪いだった」
「失礼だなぁっ!」
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