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○ ○
そして昼休み。
『ねーねー橘さーん! お昼一緒に食べよー?』
『あーっ! 澪ズルいよ! 私も一緒に食べたいーっ!』
『橘さん。俺、学食の王者って呼ばれてるんだ』
『だからどうしたんだよ、アホ三宅』
さすがにこの時間になると、別のクラスにも転校生の橘の噂は広がっていて、教室はいつも以上に人でごった返していた。
「ごめんなさい。私もうお昼は約束が……───」
橘はたくさんの生徒に囲まれながら、チラリとこちらに視線を送ってくる。
いや待て。今そんなタイミングでこっちを見たらどうなるかわかってるだろ!?
「──蒼井。案内よろしくね」
しかし、橘はそんなことも知らず──というか知ってるだろ──にニコリと作り笑顔を向けた。
それと同時に橘を囲んでいた生徒もこっちを睨む。
そりゃもう鋭い眼光で。
………………。
「とりあえず逃げるぞ、永村!」
こんな殺伐とした雰囲気の中にいたら、いつ殺されてもおかしくない。
だったらやるべきことはただ一つ。逃げるだけだ!
「あ、おい蒼井! 待てどこへ行く気だ!?」
「知るか! とにかく安全な場所までだ!」
「転校生の案内はどうする!?」
「そんなもん後だ!」
俺は弁当を持って教室を飛び出す。
「……ったく、仕方ない。転校生」
「飛鳥でいいわよ」
「そうか。では飛鳥。あのバカを追うぞ」
「……………」
永村も橘を連れて、教室を出る。
俺たちは少し急ぎながら、校舎を歩き回った。
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