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「全く…貴様は何をそんなにコソコソしている…。別に隠れなくとも、あんな男子なんぞ私がどうとでもしてやるのに」
永村は流し目で奥に身を潜めている刺客を見る。
その視線に気がついたのか、さっきまで凍てつくような殺気は消えていった。
女の子に守ってもらう俺って情けないなぁ…。
「………で、どうするんだ? 飛鳥の案内は貴様の仕事だろう」
「……まぁ、はい。そうですね」
橘の方を伺うと、とても暇そうに腕組みをしながら外を眺めていた。
「もう少ししっかりしたらどうだ。貴様も男だろう。それとも実は女だとでも言うのか?」
「……男だよ」
「ならやはりもう少ししっかりした方がいいな。せめて飛鳥の案内くらい終わらせろ」
「………………」
チラリと再び橘の方を窺う。
「………………」
目が合った。しかし、橘は興味がなさそうにすぐに視線に外に戻してしまう。
「……完全にお前に興味がないな、あれは」
「…………出会って初日に嫌われるってどんな不幸だよ…」
入学してまさかこんなにすぐに不幸な目に遭うとは…。
「……まぁ、飛鳥のことなら私が説得しておこう。貴様は案内する順番でも考えていろ」
「……………………はい」
永村は長い髪を振り、橘の方に歩み寄っていく。
何か……そこら辺の男よりも漢な気がするよ永村…。
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