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「おばちゃーん」
『あいよ───って蒼井ちゃんじゃない。何か用かい?』
「用事も用事、緊急事態だよ」
『緊急? あぁ…またいつものあれだね? 今日はどんなイタズラを考えてるんだい?』
「おばちゃん鋭いね。今日はこれなんだけど…」
俺はカウンターに体を乗り出しながらさっき受け取った、タバスコを見せる。
『タバスコ…? それくらいならこの食堂にも───』
「おばちゃん。こいつはただのタバスコじゃない。実は永村のなんだ」
『永村って…あの永村ちゃんかい?』
「そう。あの永村だよ」
『………………』
おばちゃんは目を丸くしながらタバスコを見る。
実はこの食堂で永村は隠れた有名人で、何をしたかと言うとこの学園で誰も二口目を食べたことないと伝説になった、学園一辛い担々麺と学園一甘いパフェを完食したのだ。
恐らくこの食堂では彼女の右に出るものはいないだろう。
『……それで、蒼井ちゃんはそれをどうするんだい?』
「瀬山の頼むものに入れてくれればいい。一本丸々ね」
『……………どうなっても責任は取らないからね』
おばちゃんはタバスコを受け取って、厨房の奥に消えていく。
「よし、俺たちも何か食べるか」
「そうだな」
「…………」
用事も済んだので、俺たちも券売機の方にゆっくりと歩いていった。
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