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『おい、永村が来たぞ…っ』
『道開けろーっ!』
永村を先頭にして歩くと、券売機の前で騒いでいた生徒たちが一斉に道を開ける。
「……こういうのは嫌だと言ったんだがな…」
永村はその様子を見ながらうんざりとため息を漏らした。
「いいんじゃないか? 理由はどうであれ、尊敬されてるんだから」
「私は普通に生きたいんだ。普通に一人の女として、な」
「……………」
「……それに、こういうのは…恥ずかしい」
永村は顔を少し赤くしながら顔を背ける。
「………抱き締めてもいい?」
「なっ!? 何を言い出すんだ貴様はっ! はは、破廉恥だぞ!」
「はは、冗談だって」
「ふ、ふざけるなっ! つつ、次にそういう破廉恥なことを言ったら、風紀印を卒業するまで毎日10枚ずつお見舞いしてやるからなっ!」
「わ、わかったわかった。ほら、着いたぞ」
「むぅ…」
永村は不服そうにしながら口を尖らした。
とりあえず、これから永村は怒らせないようにしよう。
昨日まで不良だった生徒が次の日から『好きなことは勉強で嫌いなことは非行です。僕は東大目指して頑張ります』と言い出すくらいおぞましい風紀印を、毎日10枚なんてもらってたら命が足りない。
きっと死ぬ。社会的にも精神的にも肉体的にも、すべての意味で死ぬぞ。
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