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「で、瀬山。何でお前はここにいるんだ?」
「それはこっちの台詞っ!」
俺たちが座った席の近くには、我らが悪友瀬山がいた。
しかも瀬山の持つ皿には真っ赤な液体がかかっている。
「今日はおばちゃんがいい調味料が手に入ったって言ってよー。サービスでかけてくれたんだ。いいだろー」
「へぇー」
全然羨ましくないね。なぜならそれは俺が仕込んだハバネロより辛いタバスコなんだからさ。
『あっ! ちょっとどういうことだい!? お皿が溶けてるよ!? あぁあっ! 蒼井ちゃんからもらったタバスコの容器も溶けちまってるよ! どうするんだい、これ!』
…………………………。
厨房の方が騒がしいが、俺は何も知らないからな。
「そんなことよりもさ~。飛鳥ちゃん、彼氏とかいるの~?」
瀬山が鼻の下を伸ばしながら白米を口に運ぼうとした橘に話しかける。
そのにやけきった顔は実にウザかった。ついでに言うと、とても気持ち悪い。
橘も同じことを思っているのか、瀬山を無視して自分の食事を再開させる。
「連れないなぁ~。あ、じゃぁさぁ、好きな男とかは? 飛鳥ちゃんモテるでしょ?」
「…………ふんっ」
橘はぷいっと顔を逸らして、瀬山と距離を取る。
怒っているらしい。
そりゃそうか。あれだけしつこく、しかもウザったらしく訊かれたんだ。怒って当然だ。
面白そうだ。もう少し傍観してよう。
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