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○ ○
キーンコーンカーンコーン───
三時間目終了のチャイムが鳴り響いた。
「蒼井、また遅刻か?」
「あぁ…」
机に突っ伏していた俺にとある女の子が話しかけてきた。
俺が学校に着いたのがちょうど三時間目の後半辺りだったので、生徒と話すのは今日はこいつが初めてだったりする。
「入学早々貴様という奴は…。教師に目をつけられても知らんぞ」
「大丈夫だ。俺より先に目をつけられる奴がいるからな」
「……あぁ、あいつか」
長い髪が揺れる。
目の前のこの子は呆れ顔で扉の方を見ていた。
永村結(ナガムラユイ)。
一見どこにでもいる普通の女子高生なのだが、中身は物凄く異質だ。
まず男勝りな性格。
男子が泣いて喜ぶような容姿をしているのに対し、男子に負けず劣らずの強気な性格。
まぁそれが彼女の持ち味であるんだが。
ちなみに、バカのクラスと有名な我が四組を取り締まる唯一の風紀委員を兼任している。
いや、取り締まるのは委員長の役目なんだが、いかんせん我がクラスの委員長がバカの筆頭となっている始末なので結果として風紀委員がその役目を引き継いでいるのだ。
「全く…お前といいあいつといい…。少しは私の苦労も考えてはくれんのか」
「悪いな──」
「む……意外と素直だな」
「──考えられない」
「貴様…私を怒らす気か?」
「すまんって。冗談だよ」
「……そうか。だが謝られるだけでは私の気が収まらん」
言い忘れていたが、永村はテイク&テイクをもっとうにしているらしい。もう意味わかんねぇな。俺もわかんねぇもん。
「そうだな…じゃぁ──」
その時、後ろの扉が開いた。
「──瀬山の命で手を打とうじゃないか」
「良いだろう」
……一瞬、永村の眼が光った気がしたが、気のせいにしておこう。
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