580人が本棚に入れています
本棚に追加
/57ページ
「うぃーっす、瀬山大地ただいま学校へやって参りまし──」
呑気に扉を開けて瀬山が教室に入ってくる。
そんな瀬山に永村はゆっくりと髪を靡かせながら近づいていった。
「瀬山。随分と遅い出勤だな」
「お、永村。おはよ。俺はいつでも社長出勤なんだ。いいだろ~」
「ほほう。それはすまない。危うく貴様を地獄のその先を見せてしまうところだった──」
「そうかそうか。まぁ俺は寛大だからな。許してやるよ」
「──とでも言うと思ったのか? 瀬山大地。光栄に思え、貴様は私自ら葬ってやろう」
「……え? マジ?」
「あぁ。大マジだ。──覚悟しろ、瀬山」
「えっ!? ちょっま───」
ドガッ!
バキっ!!
「ふんっ。遅刻を反省しない貴様が悪いんだ」
永村は瀬山……もとい死体を一瞥して、再び俺の前に歩み寄ってきた。
「交渉成立だ。蒼井、貴様の遅刻は見逃してやろう」
「ありがとよ」
死体が教室の扉の前に転がっているが…まぁ知らないフリ知らないフリ。
「そういえば永村」
「なんだ?」
永村は腕捲りをしながら振り向いた。
「次の授業ってなんだっけ」
「次は物理だ。確か物理室で実験をやると言っていたな」
物理室か…。遠いな。
「早く行かないとまた遅刻扱いで成宮教諭にこってり絞られるぞ」
「おう。少し待ってくれ永村。今準備するからさ」
「わかってる。早くしろ蒼井。私まで遅刻扱いになったらどうするつもりだ」
「急かすなって。……よし、行くか」
「そうだな。死体は──まぁ捨てとくか」
………。
俺と永村は道具を持って物理室の方へ向かって教室を出た。
空は、依然として灰色がかっていて、校舎内では蛍光灯に頼らなければならないほど暗い。
最初のコメントを投稿しよう!