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一人残されたサシャは、ユーリ邸の中を歩き回る。要するに、退屈なのだ。
大して、おもしろい部屋も実験室も見つけられないまま、サシャは、掃除を始めた。
普段はカリンがやってる掃除も、なかなか進まない。そうこうしている内に、昼が来た。守銭奴のファムは、朝食を食べたのだろうかと、食卓のある広間に戻る。広間には、起きたばかりのルティアナが、ひとりで珈琲を呑んでいた。
ユーリの恋人で、吟遊詩人らしい彼女は、数ヶ月後に結婚を控えている。働くにしても、ユーリの稼ぎが大きいため、この半年、又、旅に出ようかと悩んでいると聞いた。サシャが、挨拶をして近寄ると、赤色がかった琥珀の眼差しが向く。退屈そうな雰囲気が、周囲に浮いていた。
「お掃除ならお手伝いしましたのに」
ルティアナが、口を吐く。サシャは、慌てて首を振る。
「今日は、お留守番だから。暇つぶしだよ。ルティアナさんは、お仕事決まった?」
「やりたい仕事はありますわ。こっそり働くつもりではありますけど」
「ユーリ博士は、働くの反対なんだ?」
「ユーリは、私の放浪癖を知ってます。それを心配してましたわ。それはそれで嬉しいです」
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