stage 1

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「未来なんて知らないけどさ。本当に、未来に帰らない気なのか?」  彼に問われて、サシャは頷く。サシャは、両親に会うまでは、此処に居ると決めたのだ。その決意は固い。 「もし、未来が変わって、サシャが消えたらどうなるのかな」  なのに、答える彼の言動は、何時もと同じで軽い。 「なにさ。五十過ぎても独り身のくせに」  だから、サシャは、腹立たしさを覚えて口を吐く。彼の黄眼を睨めば、その視線はゆっくりと窓の外へと逃げた。 「だったら、旅にでもでようかな?」 「旅?」 「島に居るよりは、退屈しなくて住むだろう。未来の博士と吟遊詩人も、退屈だったんだ。きっと」  人事みたいに言うソラに、サシャは呆れる。確かに、あの二人は、常々退屈していた。特に、ルティアナは常に、邸を空けていたように思う。今朝だって、ユーリに内緒で働くのだと言っていたくらいだ。ソラの言うことも一理ある。  サシャは、未来の二人がいきなり、消えた日のことを思い出す。それは確か、サシャが十七歳の時だった。地下室でなにやら音がするので、覗きに行ったのだ。そこでは、二人がなにやら話をしていた。話の内容は、眠い脳内には入ってこない。ただ、何かが起きるとだけユーリの声が飛んでいた気がする。
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