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窓際の席に座るアクスが、口を閉じる。それを見計らうように、ヒルが口を開いた。
「それで、なにがどうしましたかな」
「博士が、イリスに食べられましたの。全然、戻ってきませんの。イリスの中から声だけ響いてましたわ――助けて、くださいませ」
カリンが、遂に愚図り出す。スピカが、カリンの頭を撫でて宥めていたが、これだけでは事情が分からないと、ヒルが早速、腰を上げた。
「ふむ。現場百見。スピカ副、同行願えますかな?」
「――そうですね。カリンさんは此処に居てください。僕と御隠居でちょっと見て来ます」
スピカは、頷いて立ち上がる。カリンが着いてくるのを止めて、ヒルと共に外へと出た。
そんな奇妙な話以外は、何の変哲もない夜だった。空には何時も通り、満天の星が浮かぶ。これは、神官との戦争が起きてから約半年後の出来事であった。
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