stage 1

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「そっか。サシャを引き取ったユーリ夫妻も次元を渡る旅に出たんだよな。だけど、隊長さんの槍があれば、過去は見れる筈だ」  打ち付けた釘が曲がっている。カプリは、サシャから、金槌を借りて、もう一度打ち直した。 「素材が足りないから、見れないって。だから、多分、過去にも未来の私が来たことを思い出したんじゃないかなとは思うんだけど」 「成る程ね――よし。できた。守銭奴に渡しに行こう。朝から人使いだけは荒いんだあの子」  カプリが、出来上がった棚を持ち上げる。朝方、まだ太陽も昇らぬ内に叩き起こされての作業だった。守銭奴ファムの我が儘を蹴る気に慣れないまま、工具箱を引っ張り出していたところに、眠れずに居たサシャがやって来たのだ。現在、朝の八時。二人の腹の虫が、大合唱していた。  カプリが、棚をファムのところへ持って行くというのでサシャは、先に食卓へ向かう。  食卓ではカリンが、主のユーリが食べ終えた食器を片付ける最中であった。台所と広間を行ったり来たりしている。  マフィンの香ばしい薫りと目玉焼きの焼ける音がする。サシャは、唾を呑み込んだ。早いところ朝食にありつきたくて、仕方がなかった。 「カリンさん、おはよう御座います」
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