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「竜也…ごめん」
謝罪の言葉なんて聞き飽きた。
いつもそう。
近寄ってくるくせに離れていく。
やっとコイツならって思えた所なのに。
『私、妊娠して……
正人さんと結婚する事になったんです。
だから、もう別れて欲しいんです。
正人さんにもう会わないで欲しいんです。』
えらく強引だ、と思った。
でも、女性にはかなわない。
俺はどうやってもアイツの子供は作れない。
日本を出て結婚は出来たとしても…
アイツの子孫を残すことは……出来ない。
「竜也………
本当にすまない。」
謝罪の言葉は聞き飽きたんだよ。
離れるのなら突き放して欲しい。
酷い言葉で罵って欲しい。
でも、それが出来ない貴方。
その貴方を愛してしまった俺…
貴方は子供を抱えて、あの女の人と去っていく…
俺はあの日から抜け出せない。
こんなに後味の悪い別れ方をしたのは初めてだった。
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