下っ端で憂鬱な一日

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「おう、ビレン!さっさと動かねえか!」 「遅いぞ!早くボスにブツを献上しなきゃいけないってのに。」 「ビーレーン!!」 「へいへーい…今行きます~」 まだ13歳である少年、ビレンは物心ついた時から盗賊の下っ端として働いていた。 流石盗賊なだけあって、戦利品は金銀財宝が溢れている。 双剣士として鍛え上げられたビレンは、実力もそこそこ。しかし危険な仕事には必ず駆り出され、いつでも最前列に立たされる。 そんなビレンに不満がないわけがない。 何かが違う、と成長していくごとに膨らむこの思い。 「…おう、ビレン。てめぇ最近生意気な面になってきたよなぁ?」 テントに入るや否や、そんなことを言われたビレンはギクリとする。 目の前には長い黒髪を結び、髭を少し生やした男。 盗賊のボスであるバルトは、この地域では知らない者がいないほど恐怖で知れ渡っている。 冷徹冷酷、最凶で最悪な男バルトの名を聞けば泣く子も黙る。 「な、なんすか。俺ぁ別に…」 恐怖で冷や汗を垂らしながらなんとか答えると、次の瞬間正面から殴られた。 「ぶへぁ!!」 その衝撃でテントが崩れ、外にいた盗賊の何人かは驚き、残りの者は笑って見ていた。 「ヒ、ヒィィ~ッ」 殴られるとは予想していなかったビレンは、鼻水を垂らしてべそべそと泣く。 そんなビレンの頭を容赦なくバルトは踏み敷いた。 「ふぎゃっ!」 「クソガキが。てめぇみたいな虫は黙って働いていりゃあいいんだよ。わかったか?」 ビレンは踏まれながらなんとか頷く。 「わか、わかひましたぁ!頭ぁ、勘弁して下せぇ…!」 ビレンの態度に満足したのか、ニヤリと笑って踏んでいた足を離した。 鼻血を垂らしていたビレンはホッとする。 そして、心の奥底で静かに爆発したこの思い。 (クソ野郎共がぁぁぁっ!!やってられるか!俺はもっと頂点に立つべき男だ!こんなところ、出てってやるーーー!!)
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