3/3

28人が本棚に入れています
本棚に追加
/43ページ
貴裕の車に乗る事15分、 蓮達は町外れにある 丘の上まで辿り着いた。 蓮の目の前に見えたのは 辺り一面に咲くピンク色の花を 散らす“桜の木”だった。 「これが…“桜”?」 「うん、そうだよ」 目の前に広がる綺麗な光景に、 蓮は目を輝かせた。 「俺、こんなの見るの初めて!!」 小さい子供のように はしゃぐ蓮を見つめ、 貴裕は小さく微笑んだ。 「来て良かったか?」 「うん!! 貴裕っ、ありがとなっ!!」 こんなに綺麗なものを 見たのは初めてで、 俺は思わず貴裕に飛びつく。 「うわっ!?……たくっ」 小さく微笑んだ 貴裕の姿を見て、 蓮は胸が 苦しくなるのを感じた。 (あれ……?) 発作のような痛み… でも何となく違う痛み… なんだろう… 自分の胸の痛みに 悩んでいると 不意に蓮の頬に 貴裕の手が触れた。 「貴裕…? どうし……―っん!?」 (な……に……?) 唇に感じる温かな感触に、 何が起きたのかわからなかった 蓮がそれが 何かとわかった時には、 口の中に温かいものが 侵入していた 「んぅっ、んーっ!!」 “苦しい”と告げたくて、 蓮は貴裕の胸を押す。 すると拘束が 静かに解けていった 「…―たか…ひろっ」 俺…、貴裕に“キス”された? ……どうして? 理由を聞こうとしても 身体はうまく動かなかった。 そんな蓮を貴裕は抱き上げる。 「そろそろ、帰るか」 「………っ」 (どうして…?) 喉に突っ掛かる言葉を 蓮は出せないまま、 静かに目を閉じた。 結局、病院に帰っても 貴裕に聞く事ができなかった
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加