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今からもう十年以上も前になるか。 まだ俺が母と暮らしていた頃。 父親はすでにおらず、俺が生まれてすぐ亡くなったらしい。 母はよく俺に歌を歌ってくれた。それが子守歌、だなんて当時は知らなかった。 「朝は花開き 童が元気に駆け回る 夜は星が瞬き 皆が静かに眠る…」 「なぁにその歌」 自然と口ずさむと、雅が顔を近付けて聞いてくる。 「…子守歌」 「えぇ~?それが~?」 「俺にとってはそうなの」 立ち上がって机の引き出しから指輪を取り出し、磨く。 何日も続けてるうちに大分綺麗になった。 「そーいえばその指輪って、お母様の形見なんだっけ?」 指輪を覗き込み、またも尋ねる。 「ま、ね…」 そう。母はもうこの世にはいない…。
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