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家には母と二人きり。
「あの日」もそうだった。
「―――っ!?」
いきなり大きな音がして、辺りは一気に炎に包まれた。
「あついよ…あついよぉ…おかあさぁん…」
泣きながら周りを見渡して、母が倒れているのに気付いた。
「玲…逃げなさい…」
頭から血を流して、それでも俺に笑いかけた。
「いやだよ…ぼく、おかあさぁんといっしょに…」
「玲…よく聞きなさい…」
そのとき告げられた真実は、俺の想像をはるかに越えていた…。
「私とあなたは…血がつながっていないのよ…」
「え…?」
「私もお父さんも…あなたの本当の両親じゃないのよ…。でもね、あなたの本当のお父さんとお母さんは生きておられるわ…。今はどこにいるかわからないけれど…」
「ぐすっ…おかあさん…」
「泣かないで…立って行きなさい。そして…あなたの本当の両親を捜しなさい。それがあなたのやることであって…あなたが生きて両親と再会することが…私の望み…」
煙が部屋に充満し始め、顔が見えなくなっていく。
「さぁ、お行きなさい…玲…」
それが、母の最後の言葉だった。
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