雷帝就任

10/38
前へ
/111ページ
次へ
城下町にあるクロムの家に帰ると、サクラとアリアが出迎える。 「お帰り、クー。どうだったミュールは?」 「元気そうだったよ。もうちょっと年相応の女の子になってほしいけど」 「いいじゃない。ミュールちゃんはクロムたちのこと大好きなんだから」 「でも許婚がいるんでしょ?彼の事はどうでもいいみたいで……」 「不憫よねぇ、あんなに顔真っ赤にして頑張ってアプローチしているのに」 「クロムとずっといたからかしらね。お兄ちゃんっ子になったのかもしれないわ」 「僕たちも手伝ってあげないとかな?」 クロムはローブを上着掛けに掛けると、代わりにエプロンを着ける。 「大丈夫じゃない?いつかあの子から熱烈なラブコールが送られるわよ」 「そうね。男の子の大事な関門だから下手に手を出しちゃ良くないわ」 「そっか。それで、夕飯のリクエストはある?」 「あたしは何でもいいわ」 「そうねぇ……母さんはリゾットが食べたいわ」 「うん、わかったよ。それじゃ待ってて」 リクエストを聞くと、早速調理に掛った。 キッチンで夕飯を作る彼の背中を見ながら、女性陣は何かを話している。 「ホント、いい子に育ったわ」 「拾われたばっかりの頃は警戒心剥き出し、誰とも話をしないわでしたよね。なぜかサクラさんだけに懐いて」 「あの人が拾って来たって言うから面倒見なきゃって思ってね。病室に行ったらいきなりぎゅうって抱きついてきて……」 「あはは。その時18歳だったんですよね?よくそんな覚悟を」 アリアはお茶を一口飲むとそんなことを聞いた。 「あの人絡みだとほっとけなくって。それに可愛いかったしね。小さい弟ができたみたいで」 「いろいろあったみたいですね。いい意味で、ですけど」 「そうね。クロムは謎だらけの迷子ってことだったから」 「………エドワード以外の幹部とサクラさん、王宮上層部の一部はみんな知っているんですよね?クーの右腕と左目の秘密の事」 彼女は少しトーンを落として言った。
/111ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加