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城下町にあるクロムの家に帰ると、サクラとアリアが出迎える。
「お帰り、クー。どうだったミュールは?」
「元気そうだったよ。もうちょっと年相応の女の子になってほしいけど」
「いいじゃない。ミュールちゃんはクロムたちのこと大好きなんだから」
「でも許婚がいるんでしょ?彼の事はどうでもいいみたいで……」
「不憫よねぇ、あんなに顔真っ赤にして頑張ってアプローチしているのに」
「クロムとずっといたからかしらね。お兄ちゃんっ子になったのかもしれないわ」
「僕たちも手伝ってあげないとかな?」
クロムはローブを上着掛けに掛けると、代わりにエプロンを着ける。
「大丈夫じゃない?いつかあの子から熱烈なラブコールが送られるわよ」
「そうね。男の子の大事な関門だから下手に手を出しちゃ良くないわ」
「そっか。それで、夕飯のリクエストはある?」
「あたしは何でもいいわ」
「そうねぇ……母さんはリゾットが食べたいわ」
「うん、わかったよ。それじゃ待ってて」
リクエストを聞くと、早速調理に掛った。
キッチンで夕飯を作る彼の背中を見ながら、女性陣は何かを話している。
「ホント、いい子に育ったわ」
「拾われたばっかりの頃は警戒心剥き出し、誰とも話をしないわでしたよね。なぜかサクラさんだけに懐いて」
「あの人が拾って来たって言うから面倒見なきゃって思ってね。病室に行ったらいきなりぎゅうって抱きついてきて……」
「あはは。その時18歳だったんですよね?よくそんな覚悟を」
アリアはお茶を一口飲むとそんなことを聞いた。
「あの人絡みだとほっとけなくって。それに可愛いかったしね。小さい弟ができたみたいで」
「いろいろあったみたいですね。いい意味で、ですけど」
「そうね。クロムは謎だらけの迷子ってことだったから」
「………エドワード以外の幹部とサクラさん、王宮上層部の一部はみんな知っているんですよね?クーの右腕と左目の秘密の事」
彼女は少しトーンを落として言った。
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