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空から見て一点だけの草原に、一人の少年が立っていた。
否。決して草が少ししか生えていないわけではなく、彼の周囲には目視だけでも100万の魔物の軍勢が取り囲んでいるだけだ。
彼は青白く帯電している刀を鞘に入れて持っているだけで、左目には眼帯、右腕には赤黒い古びた包帯を肩まで巻きつけているのみ。
それに対して周囲は剣や斧などで武装し、魔人や巨大な竜までもが彼を凝視していた。
魔物の群れの中でも、竜に跨って彼を見下ろしている者が話しかける。
「どうだ?まだこれだけの数を相手できると思っているのか?」
自信たっぷりの表情で言い放つ男に向けて彼は一言答える。
「答えは変わらない。初代以来誰も就いたことのない‘雷帝’の座を取る気なら、これだけの相手は倒せなくちゃいけない」
「そうか、ではそれは無謀な試みと言うことだ!!」
男は直径10メートルはあるかと思える火球を彼に向けて放つ。
彼はそれを一瞥すると、刀の柄に手を添える。
そして、一閃。
それだけで火球を四散させ、周囲の軍勢に撒き散らす。
特大の炎に焼かれている魔物に向け、円を描く形で斬り払えば半数が消し飛んだ。
「まずは50万。ここからは確実に仕留める」
「総攻撃だぁあ!行けぇえええええええ!!」
一度に50万も削られるとは思わず、男を叫んで魔物たちに突撃させた。
次々に来る敵を捌き、男のいる丘までの道を斬り開く。
数も質も兼ね備えている魔物たちをものともせずに、ただひたすら前を見つめて前進する光景は異常だった。
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