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「なんだアイツは……人間なのか?」
「人間ですよ。彼は間違いなく人の形をしている。それ以外というと――――」
「人の形をした破壊の化身だな」
跨っている竜の言わんとしていることを男は理解すると、あと10万もいない部下を魔力の籠められた一閃で再び薙ぎ、一直線にこちらに向かってくる彼を見た。
「ここは私が、貴方様はどうかお逃げください」
「ま、待て!」
竜が火炎放射を彼に向けて放つ。
火炎放射の勢いは凄まじく、人間なら数秒持たないで溶けて消えている威力だ。
にもかかわらず…
「【紫電八裂】」
彼の一振りの斬撃が瞬間八つに分かれると、竜の体は切刻まれ、灰となって消えた。
「残りは、貴方だけだ。大人しくギルドに投降すれば罪は少し軽くなる」
「ここまで来て……するわけがない!」
「そうですか。なら、せめて苦しませないように――斬ります」
「来い!俺を、殺してみろぉおおおおおお!!」
刹那。男の首は落ち、この草原に残っているのは彼だけとなった。
「安らかに、眠れ」
一言そう呟くと、彼はその場から空間転移で去る。
事の一部始終を見ていた二つの影が何もない空間からいきなり現れる。
「見事。伊達に雷帝の座を狙っていただけはありますね」
「そんなレベルじゃないだろ?!相手はザコだの上位だののごちゃ混ぜだったにせよ100万だぞ!」
「そうですね。古くから雷帝は最強であるべし、と言われるぐらいですから。先代……と言っても一代前ですが。彼よりも強かったのではないですかね?」
「そういうことになるな。とにかくアイツは合格だろう。ギルドマスターにもこの事は伝わっている」
「では、我々も戻りましょう。土帝(ドテイ)」
「そうだな、水帝(スイテイ)」
そう言って彼らも姿を消した。
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