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部屋の前まで来ると、彼はノックをする。
「どなたですか?」
「クロムだよ、ミュール」
自分であることを告げると、満面の笑みで彼よりも年下の少女が出てきた。
「クーお兄ちゃんっ。今日はどうしたの?」
「ちょっと嬉しいお知らせと、ミュールに会いに来たんだよ」
「感激!とにかく入って」
「うん。お邪魔します」
ミュールの部屋は一言で言うなら年頃の女の子の部屋だった。
壁紙はピンク一色。ぬいぐるみがたくさん置かれて、天蓋付きのベットはフカフカだ。
彼は用意された椅子に腰かけると、ベットに座るミュールが質問をしてくる。
「お兄ちゃん、嬉しいお知らせってなに?」
「実はね、今日から僕は【雷帝】になったんだよ。ずっと憧れていたね」
「ホント?!じゃあ偉い人になったんだね?」
「偉いかどうかは分からないけど、夢は叶ったよ。これからはちゃんとミュールのことも守れるよ」
「嬉しいっ。アリアお姉ちゃんたちだけじゃなくてクーお兄ちゃんにも守って貰えるなんて」
14歳の彼女は心の底から嬉しそうな笑顔を浮かべていた。
「今日は泊まってくの?」
「ううん。母さんとアリアが夕飯を待っているからね。僕が作らないといけないんだ」
「へぇ。お兄ちゃん、今度あたしにも作ってくれる?」
「うん、いいよ。いい子にしてたらね」
「むぅ……あたしもうそんなお子様じゃないよ」
「そんなところが子供っぽく見えちゃうんだよ、ミュール。それじゃ、また来るよ」
「うん。またね、クーお兄ちゃん」
彼女が手を振ると、彼もソレに応じてから部屋を出た。
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