第一幕:ここから始まる一枚看板

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「あのー……そろそろ町の方に向かいたいな~と『紅葉(もみじ)』は思いつつ、横で静かに待っているのですが……」 兄の用事が終わるまで横で見ていた紅葉は、おずおずと進言する。 但し、言葉はゆっくりだが体は神社の入口を向いており、直ぐにでも飛び出して行きたいのが伺える。 「落ち着きなさい紅葉。要件は済みましたが、先程みたいに走り出さないで下さいよ」 「了解ですよ、お兄ちゃん。走り出しは、しないように急ぐね~」 妹の何処か不安な言葉に少し頭を抱える『晩(くれの)』。取りあえず大丈夫だろう、と思い自分の部屋に戻ろうとする。 「……まぁ気をつけてね。それとななよも、最近気の荒い妖怪が彷徨いているみたいだから注意して……」 「了解で…す……くれ……」 不意に遠退いて行くななよの声。晩がそちらに振り返ると、紅葉に手を引かれ空へと飛び立っている2人の姿が映る。 「これなら走らなくても急げる、まさにシンプルな答え~!! しっかり捕まってね、ななよ~」 「少し…待って下さい紅葉さん!! 私まだ飛行は上手く出来なくて……」 「マスターぐらついてます! 落ち着いて、高度の維持を!!」 2人と1体は危ないバランスを取りながら、かなりの早さで飛んで行く。 一応紅葉が制御しているが、不慣れなななよにはまだ早い技術である。 「……紅葉。帰ったら少しお勉強かな……」 妹の破天荒さに驚かされる兄。 晩はお仕置き用の教材を作る為、早足に自室に向かっていった。
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