第一幕:ここから始まる一枚看板

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「相変わらず掴みどころの無いと言いますか、雲のようなお方です……」 ななよは受け取った水筒の中身を飲みながら思う。 『〇〇〇』は此処『〇〇〇神社』の神主にして、ななよを引き取ってくれた方である。 とても穏やかでのんびりした雰囲気の持ち主だが、先を読むような言動からかなりの策士では? とななよの評価。 現在ななよが着ている素人目で見ても超一級品と判る衣装を、たった一晩で造り上げる離れ技を持っている。 本人曰わく、「本気を出したら世界が壊れてしまう」と何故か腕を押さえながら嘘らしい顔で話ししていたが、何処まで本当かも分からない。 けれど一つ分かっているのは、見ず知らずの、しかも記憶喪失な素性の分からない自分を手厚く歓迎してくれる…… 「本当に不思議でとても優しいお方です」 ななよはもう一度静かに呟くと、半分程飲み干した水筒を片手にさっさと掃除を切り止め『・・・』の方に向かい出す。
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