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笑いを堪えているのか彼は、口元に手を当ててわたしを覗き込んだ。
「だって…全然かまってくれないんだもん」
火照った顔を彼に見られたくなくてそっぽを向いたわたしを、彼は片手で引き戻した。
「しゃーないなぁ。それじゃ…」
言うなり彼は少し残ったコーヒーを一口含んでから、わたしにキスをした。
じんわりとほろ苦い。
口の中に残るコーヒーの味。
でもだんだん。
何だか。
甘い。
甘くて蕩けそう。
身体の芯がジンジンして、くずおれるように背中から床に転がった。
それを追いかけるようにして彼もわたしの身体に覆い被さる。
「ねぇ。仕事は?」
いいの?
聴いてるのか聴いてないのか彼は、悪戯っ子のような顔をしていて。
「美味しそうなお茶うけがあったから」
とか何とか言って、またキスをするのだ。
甘くて苦い、キス。
わたしはコーヒーのお茶うけですか。なんてモゴモゴ言ってみては彼の首に腕を絡めたり。
湯気が冷めないうちに完食してね。
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