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彼お気に入りのモスグリーンのマグカップ。
ホカホカと湯気をたてる焦げ茶色の液体がゆらゆら。
片手にはそのマグカップ。もう片方にはパソコンのキーボード。
一定のリズムで動く彼の両手を、わたしは頬杖ついてぼんやり見てた。
「ね~ぇ、仕事まだ終わんないの?」
仕事で忙しい時期半ば無理に彼の家へ押し掛けて、子供染みたことホントは言いたくないんだけど。
あまりにもわたしを相手にしてくれないんだもの。
――仕事とわたし、どっちが大事?
なんて。
不毛だわ。
「ん…あとちょっと」
30分ぐらい前もそんなコト言ってましたケド。
あなたの「ちょっと」って1時間?
1日?
1ヶ月!?
「もお!ちょっとくらいかまってくれてもイイじゃんバカッ」
可愛らしくぷくっと頬風船。
…全然こっち見てないし。
あったまきた!
わたしは彼の片手から、口に運ぼうとしていたマグカップを奪い取った。
「お、おい…」
流石に不意を突かれてビックリしたのか彼はわたしに視点を合わせる。
わたしはそのままマグカップの中の焦げ茶色の液体を一気に煽った。
「…にっが~い!?」
半分くらいイッキ飲みしたところで、わたしはあまりの苦さにむせ込んでしまった。
決まり悪い顔をしたわたしの背中を、彼は大きな手で擦ってくれた。
その手は微かに震えている…ような気がするが。
「苦手なら飲むなよ、コーヒー」
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