神谷 優真 =『あの夏』の記憶=

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「おい、ユーマ!! 何やってんだ~? 早く行くぞ。」 「……あぁ。すぐに行く。」 彼はベンチに置いてあった自分のグラブを掴むと、彼の相棒の背中を追いかけた ベンチを飛び出すと、空からは眩しい太陽の光────あの時と同じ、暑い太陽が輝いていた 「どうした? ユーマ、何か今日様子が変だぞ?」 「……気のせいだよ。ほら、さっさと行くぞ。」 そう言って彼は男の隣まで走っていき、作り物の笑みを浮かべた 男はあの後も、彼の心の支えに、必死になろうとしていた 彼は男に、本当に救われた 「そうか? それなら良いや。さ、今日も頑張りますか。大分投げれるようになってきたしな。完全復活も近いんじゃねぇか?」 「……そうだな。」 そう言って彼は、真っ青な空に浮かぶ、真っ白な雲を見上げた ───あの時、何もかも失った彼は、投げることも失った 今彼は、再びマウンドに上がろうとしている ─────失ったものを、取り戻す為に
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