神谷 優真 =『あの夏』の記憶=

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開けられた扉の向こう側には、彼よりも頭一つ小さな、女性 彼は突然のことに、あっと一言もらしただけで、その女性をじっと見つめていた 「あ……。お見舞いに来てくれたの? ありがとう。さ、中に入ってちょうだい。」 そう言うと彼女はニコッと微笑み、彼に中に入るよう促した 彼は、この女性の事を良く知っている ────あいつの、母親だ 以前あいつの家に行った時、彼女は確か40代だと、あいつも本人も言っていた だが、彼女はそうとは思えないほど美しく、性格もあいつに似て明るい あいつは母親似なんだと思った しかし、今の彼女の目の下にはクマがあり、さらに顎先に向かって一筋の線がある いつものような美しい彼女は、そこにいなかった
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