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一部を残しただけの家屋のコンクリートの壁は、その本来の役割を失って久しかった。
壁には屋根はなく、ぽっかりと空いた空間の向こうにスラム街が見える。
それが、かつてどういうものだったかを、ブレインは鮮明に思い出すことが出来た。
10年前。そこに在ったひとつの孤児院は、襲撃に遭った。
――――あの日。
マンホールの蓋を押し上げて、地上に出たブレインの目に映ったのものは、轟々と燃える孤児院だった。
孤児院とそれを囲むダウンタウンの街並みが、赤く業火で燃えていた。
今、残された残骸も朽ちて果てるのを待っているだけだ。
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