🆗『お月見』

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 二羽の兎が月を見ながら何やら話をしてるので、私は耳を傾けてみた。 「……だから、あれが臼で、あれが杵であれが兎な」 「見えない」 「だよなー! 見えないよなー!」 「見えない」  思わずくすりと笑いそうになったが、そこは我慢。  面白いから、もう少し見ていよう。 「でも、人間には見えたらしいんだよ」 「人間はおかしい」 「そう、人間はおかしいんだよ」 「眠い」 「はいはい。お前が月の兎が見たいって言ったのに」 「兎いない。眠い」 「ああ、もう。ちゃんと巣穴帰れるか?」 「帰る。眠い。兎いない」 「しつこいな。じゃあなまた明日。おやすみ」 「おやすみ」  そして二羽はそれぞれ巣穴へと帰っていった。 「確かに兎には見えないよなあ」  思わず月を眺めてポツリと呟く。  その後、今まで会話を思いだし、私が大笑いしてしまったのは内緒の話だ。
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