◯◯の虫

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しかし、その威容なまでの威圧感も 少年が目を覚ましたと認識した後からは 感じなくなっていた。 ……無意識のうち、か。 少年はそう考えた。 無意識のうちに、 あれほどの想いを 込めた顔を出来るのも珍しい。 いや、違うな。 無意識だから、想いは込もっていな―― 「入るぞ」 突然聞こえたのは、先の男の声。 考えるのを止めた少年は、目を向ける。 そして、聞こえてきたテントの入口から 男がのっそりと入ってきた。 その姿は、今更ながら 巨大に見えた。 それは、自分がいま 地面に座っているから ばかりではない気がした。 ふと、男の背後から 視線を感じる。 そこに目をやるが 誰もいない。 あれ、と思い 男の周囲をくまなく探すが 誰もいないようだ。 そんな少年の視線に気付いたのか 男が笑った。 「お前が気にしてるのは、これか?」 そう言って 差し出した掌には 「よぉっ☆少年!!」 ……鬼がいた。
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