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「落窪と戦うんだってねぇ」
「いや、戦うとかそんな物騒じゃ…なんで知ってるんです?」
「本人から先生に言ってきたもんでね。勝ったら学園を辞めるとも言われた」
ここに退学届もあるよん。
枯木先生はそう言って、ジャージのポケットからくしゃくしゃになった封筒を取り出した。
なるほど、確かに退学届と書いてある。
冗談じゃ、やっぱないのか。
「てか、くしゃくしゃにしていいんですかそれ?」
「良いでしょうよ。どうせ本人にお返しするか、ゴミ箱にぽいするかなんだし」
……なるほどね。
先生も退学には反対なんだ。
「……僕達、勝てると思います?」
「弱気にならなきゃ、勝率は六割、いや七割は固いかな」
「……随分高いですね」
「さっきの話を盗み聞くに、何か一つに特化するんでしょ?選ぶ競技によるけど、群対個なら負ける方が実際おかしいんだよ」
騎馬戦なんて、やる前から勝ってるしよ。
先生はあくまで負けることを否定する。
だけど僕は…
「…相手は零ですよ?」
「だからどうした。結局はただ一人の人間だ、一平方メートルもスペースがありゃすっぽり埋まっちまうちっぽけな存在さ。だからこそ我々は群れなきゃ生きれんのでしょーが」
「群れないで一人で生きてる人もいますけど」
「いるか?いねぇだろ。そいつ毎日飯食わないで生きてるのか?水も飲まないで過ごしてんのか?」
「いや、ちゃんと食べてるはずですけど…」
「だったら人と触れ合ってるじゃねぇか。誰かが作った食べ物を食って、誰かが綺麗にした水を飲んで生きてんだろ?生きてるって時点で人は孤独になり得ねーの。墓の下に埋まって初めて独りを感じるのさ、人間は」
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