第1話

10/26
前へ
/26ページ
次へ
声の主は、私と同じく雨宿りした細身の背の高い男性。 一目で分かる高級スーツをなんなく着こなし、眉間に皺を作り空を睨んでいた。 「……ヤバ」 「え? ……あぁ、本当ヤバイくらい凄い雨だな」 つい口から出てしまった言葉に、男はしっかり私を見て呆れた声を漏らす。 確かに、ヤバイくらいの豪雨なのだが、私が言った意味は違う。 鼻筋はスーと気持ちが良い程通っている。 唇は薄いが、そこから作り出される言葉は、なんとも言えない心地好さを感じるハスキーボイス。 それだけでも充分過ぎる程カッコイイのだが、それに加え雨に濡れた髪が、この男の色気を倍増させていた。 それに、その瞳。 細めた目は黒ではなく、グレーだった。 「そ……そうだね。 ゲリラだよ」 なんとか目をそらし、思考を読まれないように話しを合わせる。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

127人が本棚に入れています
本棚に追加