第1話

12/26
前へ
/26ページ
次へ
  「ヤバッ! 濡れたらヤバイんだ!」 雨に濡れてないか、急いで中身を確認する。 中には、圭から託された仕事の資料が入っている。 ファイルに入っていない資料は、奇跡的にまだ濡れていない。 が、バッグはびしょ濡れなので、このままでは資料が危ない。 雨宿りしてる暇ないじゃない。 空を見上げると、さっきよりはいくぶん雨は弱くなっている。 これくらいなら走れるかな? 覚悟を決めた私は、スプリングコートを脱ぎバッグに巻き付ける。 チラッと男見ると、目尻に溜まった涙を長い指で拭っていた。 「私もう行くから、これ使って」 バッグから出していたハンカチを、息を整えている色男に渡す。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

127人が本棚に入れています
本棚に追加