第1話

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まだ、心から笑えないけど……。 笑えるように努力するって、彼と約束したから。 だから、私は精一杯笑う。 彼との約束を果たせるように。 「俺は現場に直で行くから、今日はここでな」 私と圭は同じ会社に勤めている。 同じ家で暮らしているので、当然のように出勤は一緒。 毎朝、圭が運転する車で出勤するのだが、朝から現場入りの時は途中まで乗せてもらう事になっている。 今日も朝イチで現場に行く為、駅で車を降りる。 朝の駅前は当然のように混雑していて、その隙間を縫って、私を降ろした圭の車はスイスイ進んで行き姿を消す。 ふと空を見上げると……。 「あっ!車に傘忘れた」 グレーの空は今にも泣き出しそうだ。
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