第1話

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今朝、心配顔で圭が言っていた言葉がよみがえる。 『今日は雨だから、絶対傘は忘れるな』 溺愛は嬉しいけど、子供じゃないんだし。ってその時は思ったが、今じゃ後の祭。 もう空からは大粒の涙が溢れていた。 やばっ! また、圭に怒られちゃうよ。 傘の代わりに、手を頭の上に乗せても全く意味がない。 蜘蛛の子を散らしたかのように、人が走る。 これじゃ会社につく前にずぶ濡れじゃん。 どこか、雨宿り出来る場所は……あった! 人にぶつかりながら、やっと見付けたカフェテリアが目につき、なんとか身を隠す。 開店前だし、ちょっとぐらい良いよね? ホッと一息つき、止みそうにない空を仰ぐ。 「……酷い雨だな」 突然の声に、空を睨んでいた視線を動かす。
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