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僕は鏡の中にいる、女の子の目や唇…顔の全体をまじまじと見た…。
えーっ!?…こんなの僕の顔じゃないよ!!…だって…マジで天使みたいで可愛いし!!
『あなたの顔の脂や汚れを取り除いて地肌を見たら、とても健康的で潤いがあって、キメも凄く細かくて綺麗だった。だからメイクアップベースを省いて直接ね、クリームファンデーションを選んで、本当に薄ーく指で延ばしてみただけなの』
僕はメイクの知識とか無いから、専門的な事を言われてもよく解らない。
『そして、何より私が一番驚いたのは、あなたの目。…決して凄く大きい!とは言えないけど、でも大きめで形が整ってて、ぱっちりしてて…本当に良い可愛い目だった』
…僕の目…整ってて可愛い?有り得ない…。
僕は再度、鏡の向こうの女の子の目をじーっと確認した。うゎ…ドキドキ。
『まつ毛も凄く長くて揃ってるし…だからギャル達のような、付けまつ毛山盛りのパンダメイクみたいにはしないで、あなたの元々の目の形をしっかりと留めて活かせるように、上瞼にアイラインをすーっと入れただけ』
よくよく考えたら…女の子の顔を、こんなに間近で、じーっと見たことがあるだろうか…ない。つか自分の顔だし…未だに信じられない。
『鼻も小鼻でツンとしてて、唇も上下の厚さのバランスが凄く良い。ただ残念なのは…その手入れの行き届いてない眉毛よね…』
僕の顔の代表的シンボル…ゲジゲジ眉毛。
『もう少しだけ眉を細くしてあげると、更に良くなるわ』
そうアンナさんが言い終える前に、菊江のおっさんが、僕の目の前に来て立った。
『あらま、ほらね。私が言ったとおり、本当に可愛い女の子になったじゃない』
そして、夕方と同じことを再度訊いてきた。
『ねぇ。こんなに可愛いんだから、少しは女装に興味が湧いてきたでしょ?毎晩毎晩可愛く女装ができて、たーくさんお金が貰える夜のアルバイト…お兄ちゃん、やってみない?』
『…えっ!?』
僕は黙って下を向いた。
『確かに…化粧した僕の変身ぶりに本当に驚いた…けど、そういうバイトは…ごめんなさい』
おっさんは、はぁーっと溜め息を払った。
『勿体ないけど…仕方ないわね。お兄ちゃん、ごめんなさいね』
僕は顔をぐっと上げで、ゆっくりと振り向いてアンナさんを見た。
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