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そこへ、今度はナオさん。
『金魚ちゃんも今、メイクを勉強してる最中なんだから覚えておいて』
『えっ?あ…はい』
『メイクの技術を身に付けて磨くこと、それは確かに重要なことだけど…』
『はい』
『…メイクの技術だけが上手くなっても駄目なの』
えっ?上手くなるだけでは駄目!?
『例えばね、挙式や披露宴に出席する時と、葬儀や告別式に参列する時のメイクが同じじゃ駄目…ってのは判るわよね。パーティーに参加する時とか、大好きな彼とデートする日とか…』
あ…なるほど!そういうことか!
つまり、その場その場に応じて、メイクをどれくらい華やかにしていいのか、また逆にどれくらい抑えなければならないのか…そんな応用技術や知識や常識をも身に付けなければならない…ってことか。確かに。
メイクって、一言では簡単に言えるけど、本当にこんなに奥が深い…。
『あの…アンナさん、私のメイク…』
『あー。ごめんね詩織。今始めるわ』
午前11時14分。僕と代わるように椅子に座り、アンナさんにメイクをし始めてもらう詩織。
それから約25分後…ようやく詩織のメイクが終わった頃、秋良さんと春華さんがアンナさんのマンションに来た。
『アンナさん、ちーす』
『おはよぉございまぁす♪』
『…そうなの。今詩織ちゃんが着てる服は、初めはほんとは金魚ちゃんが着るようにって作ってたのよ…ね。秋良くん』
けど、金魚の髪が短くなったことで《やっぱり男装にしよう》と変更。この衣装は詩織へと回された。
『なぁ詩織、ちゃんと立って俺達によく見せてくれよ』
秋良さんにそう言われ、詩織は可愛らしくウンと頷いて立ち上がった。
真っ黒の、見た目革っぽい材質の二分袖ワンピース。でも全然革製ではないらしい。
襟元は両方に小さな赤い飾り石の付いた、大きめの黒い襟になっていて、赤いネクタイがきゅっと締められ、胸間に垂れ下がっている。
左手首には革製のベルト式リストバンド。脚には赤と黒の縞々ニーハイソックス…派手だ。
『いゃん♪…胸は小っちゃいけど、詩織ちゃんの脚…超細可愛いッ♪』
『あ…ありがとう。春華さん』
…それって褒めてるんだろうか…?
『あのぉ…もうちょっと間近で詩織ちゃんの、この細可愛い脚…眺めてみてもい…』
『だっ駄目です…』
詩織は今度は後ろを見せてくれた。
そこにも僕のシャツの背中と同じ、《トライバル金魚》の赤い刺繍が。
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