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僕は車の窓から外の風景を確認…あ、もう瀬ヶ池の街ん中だ。
会場に近づくにつれ、心成しか歩道を行き交う人達の数が増えてきた気がする。
『おっし!お前ら、もうすぐ駐車場に到着するぞ』
『はーい』
『はぁい♪』
『あ…はい』
嘉久見大通り近くの有料駐車場。入ろうとすると近づいてきた女性警備員。
『申し訳ございません。本日この有料パーキングのご利用は《スプリングフェスタ》実行委員より許可された来賓様専用となっておりますので…』
秋良さんは落ち着いて、名刺のような小さな紙片を女性警備員に見せた。
『あ、大変失礼いたしました!どうぞお入りください』
『どうも』
『ありがとーぉ♪』
ドアガラスを全開に下げ、女性警備員さんに大きく、愛嬌たっぷりに手を振る詩織。
『あー、もしもし。啓介?…おう、俺ら駐車場に今着いた。お前らは?…もうそっちに居るってか?…分かった。俺らも今からそっちに向かうわ』
秋良さんは携帯をGパンのポケットに戻し、車のトランクからケースに入ったギターを取り出して、肩に担いでドアをロックした。
今度は徒歩で会場へと向かう。その途中、女の子らとすれ違う度に『ちょ…きゃあ!金魚ちゃんだぁ!』『えぇっ!?…男の子の衣装!?』『何あれ凄ーい!詩織ちゃん超可愛ーい!!』…って騒がれまくり…。
《早瀬ヶ池・スプリングフェスタ》…嘉久見西側大通りの道幅、歩道を含めて約35m。そして延長約800mの区間が車両通行禁止のフェスタ会場となっている。
その開催会場内に入ると、もう物凄い人だかり。
ふと見ると《新井区》と記された屋形テントの下で、焼きそばやフランクフルトを調理し、氷水で冷やしたラムネとかも販売しているおばちゃん達。
…うゎ…なにあれ…。
ゴスロリ衣装の女性集団…。あそこだけ、なんか異様な雰囲気を醸し出してる…。
『あっ…ちょっと見て!あれ金魚ちゃん達じゃない!?』
『ほんとだ!詩織ちゃんの格好、あれ超可愛いー!!』
『ちょっとみんな!早く行こ行こ!!』
うわぁー!!…その100人以上のゴスロリ女子軍団に、あっという間に囲まれてしまったぁぁ…。怖ぃ…。
けど、詩織と春華さん…めっちゃ大ウケで大爆笑してるし。
『金魚ちゃん達、ステージで歌うの!?』
『うん。私達、1時からステージで歌いまーす。良かったら観に来てねー』
そう元気よく、真っ直ぐに右手を挙げる詩織。
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