女装と復讐‐躍進編‐

116/123
前へ
/467ページ
次へ
僕は詩織を見た。詩織だって僕を見る。 『さぁて…行こうか。詩織』 『うん。私も頑張る』 『お二人さん、じゃあ頑張って行ってきてね!』 『はーい』 手を振り、温かく見送ってくれてる鈴ちゃんに手を振り返し、僕ら2人はステージ横に備え付けられた階段を上って、観客の前に現れた。 『どうもー』 『いぇーい♪こんにちは皆さーん♪』 僕らは、突然わあっと湧き立った大歓声と拍手に迎え入れられながら、観客側に向かって手を振る。 ステージから見下ろしたら、観客数…1000人なんてどころか、その倍は居るんじゃないかと思う。…とにかく凄い人の数。 『ちょっとすみません。いきなり悪いんだけど、1分だけ作戦タイムをください』 えっ?何?作戦タイム? 気配に気付き、振り向くと…僕の横でマイクを握って立ってたのは…秋良さんだった。 『とりあえず春華さん、お疲れ様でした』 『春華さんお疲れさまー』 『ありがとねッ♪金魚ちゃん、詩織ちゃん』 ステージの真ん中に集合した僕ら。 『お前ら、緊張なんかしてないよな?』 『はい。大丈夫です。秋良さん』 『私も全っ然平気ー』 『よし。今回は金魚と詩織を目立たせるのが目的だ。啓介、わっち、ヤマ…いいか?頼んだぞ』 頷いて応え、返す3人。 あ…ヤマさんは、ドラム担当の人のこと。 『私がお客さん達の雰囲気を、上手ぁく温めておいたんだから、冷めちゃうようなパフォーマンスだけは止めてよねッ!』 イヤミとかではなく、笑顔を見せながら《いい意味》で僕らを煽ってくれる春華さん。 『絶っ対に大丈夫!だって私と金魚だもん!』 『うんうん。そっかそっかぁ。あと《タンバリン・マジック》にも期待してるねー。詩織ちゃん』 『うん。任せといて!春華さん!』 …タンバリン・マジック? いつ手に持ったのか、詩織の左手には《フルムーン》と呼ばれる、円型&皮張りなしの黒色のタンバリンが握られていた。 『詩織、それ何?』 『タンバリンよ』 そんなのは僕だって判ってる。そういうことじゃなくて…。 『よし!お前ら始めるぞー!』 『おー!』 『おぉー♪』 秋良さん達は後ろへと下がる。春華さんは急いでステージを下りた。 僕は観客から見てステージの左に、詩織は右に…ほんの少し離れて立つ。 1曲目はGLAYさんの《誘惑》だ。 合うの?ロックにタンバリンって…?
/467ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1301人が本棚に入れています
本棚に追加