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詩織は《物腰フリフリのし過ぎで、途中で疲れてしまった》らしい。…って、誰が考えたって、そりゃあ疲れることくらい解るって。
つか、振る舞い可愛らしく『ごめんね…』って言えば、何でも許されると思いやがってー!詩織このぉ!
…んまぁ…でも、済んだ事を責めても可哀相なだけだし。この場は詩織の笑顔と可愛さに免じて許してあげた。
…えっ?詩織のほうが、僕よりも一枚も二枚も上手!?って、なんで!?
『はーい。お疲れさまー』
鈴ちゃんが《打ち合わせどおり》ステージに上がってきた。続いて何人かの男性担当員も、パイプ椅子を両脇に持って上がってくる。
『皆さんもご存知のとおり、彼女達は早瀬ヶ池ではちょっと有名な女の子だけど、でも有名なこと以外は、皆さんとは何も変わらない普通の女の子達なんです』
鈴ちゃんがステージの最前に立ち、観客らに向かって語りかける。
『…そんな彼女達が、このステージを1時間も任せられてるんですよ!…皆さんも大変だなぁって思いますよね!?』
担当員がステージの中央にパイプ椅子を3脚置き、秋良さん達にもパイプ椅子が用意された。
『詩織ちゃん、金魚ちゃん。どうぞお座りください』
『すみませーん』
『あ、ありがとうございます』
『…ほんのちょっとだけ、詩織ちゃんと金魚ちゃんに休憩タイムをあげてもいいですかー?』
観客らから、たくさんの歓声と拍手。鈴ちゃんに手を振る観客の姿も幾つか見える。
『みんな、ありがとーう!』
大きく手を振り、お礼を返す鈴ちゃん。
『観客の皆さんからお許しも出たし…お二人さん、じゃあ座…あ!…えーっ。あははは…』
後ろ…僕らのほうを振り返った鈴ちゃん。
…ごめん。もう僕ら…先に座っちゃってますけど…。
観客らから見て、鈴ちゃんが右側に、僕と詩織が並ぶようにして左側に、お互い斜めに見合う《ハの形》の配置で座った。
『はい。えーと…岡本詩織ちゃんと池川金魚ちゃんでーす』
僕らは目の前の観客に向かって小さく手を振った。
『ちょっとお休みついでに、3人でお喋りしてもいいですか?』
常に観客らに語りかけるようなトークスタイルの鈴ちゃん。
『…ってゆうか、今日は観客の皆さんに私、凄く自慢したいことが1つあるんです!』
『?』
『?』
「何ー?自慢って?」
「鈴ちゃん、何ー?」
鈴ちゃんは笑顔で自慢…えっ?
…それって…自慢?
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