1301人が本棚に入れています
本棚に追加
秋良さんは詩織と目が合って、表情がきょとんとしている。
『えっとね…あの黒いギターの、ちょっとやんちゃっぽいお兄さんが《秋良くん》って言うのね。そして、こちらの青いギターのイケメンお兄さんが《啓介くん》って言うの』
とりあえず詩織の語りにウンウンと頷いてくれてる、観客の女子高生らと女の子達。
『それでね…秋良くんがこの衣装をデザインしてくれて、そのデザインをもとに、啓介くんがミシンで縫って作ってくれたのー!』
観客らから、たくさんの拍手。
「すごーい!」
「ほんとすごーい!」
秋良さんは右手を挙げてアピール。啓介さんは深々と、観客に向かって大きくお辞儀をした。
『…あの!!』
『??』
『どうしたの?金魚ちゃん?』
僕は《チャンスはここしかない!》と突然頭に閃き、その勢いで会話に飛び入った。
『この男装衣装だけじゃなくて…私が瀬ヶ池の街を歩く時に普段着てた洋服ぜーんぶ、あのお兄さん達の経営するお店にオーダーメイドして作ってもらってたんです』
『オーダーメイドなの!?全部!?…凄いね!』
僕の言う《チャンス》…それは《恩返し》。つまり《歩く広告塔》のことだ。
実は…僕はずっと、この使命に悩んでた。いつこの使命が果たせるのか…恩返しができるのか…って。
「何てお店ー?」
「お店の名前教えてー」
やった!観客の女の子らが《恩返し》に飛び付いてきてくれた!
僕はゆっくりと立ち上がった。
『…お店の名前は【Posi-Stylish/Japan】《ポジ‐スタイリッシュ/ジャパン》って言うの!』
やっと、とりあえず1つ恩返しができる…それが凄く嬉しくて、僕は満面の笑顔と大きな声で、観客の皆にそれを教えた。
『あ…お店って言っても、店舗を構えてるとかじゃなくて、主にネット販売だから、みんなサイトやモバイルで調べてみ…』
「そのピアスはー?」
「ピアス買ったお店知りたーい」
えっ!?あ…ピアス?
『えっと…この《硝子の金魚ピアス》は【Genomus.】《ゲノムス》ってお店で…あっ!こっちは《弥永町》ってところに実際にあるお店で買えます』
「えっ!?買えるの!?」
「買えるの!?金魚ちゃんのピアス!?」
「そのピアス欲しい!!絶対買う!!」
「もう一回お店の名前教えてー」
あーっ!!しまったーぁ!!
…なんで僕…勢いで『買えます』なんて付け加えて言ってしまったんだろう…ほんとは買えないのに…あぁ。
最初のコメントを投稿しよう!