女装と復讐‐躍進編‐

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秋良さんは詩織と目が合って、表情がきょとんとしている。 『えっとね…あの黒いギターの、ちょっとやんちゃっぽいお兄さんが《秋良くん》って言うのね。そして、こちらの青いギターのイケメンお兄さんが《啓介くん》って言うの』 とりあえず詩織の語りにウンウンと頷いてくれてる、観客の女子高生らと女の子達。 『それでね…秋良くんがこの衣装をデザインしてくれて、そのデザインをもとに、啓介くんがミシンで縫って作ってくれたのー!』 観客らから、たくさんの拍手。 「すごーい!」 「ほんとすごーい!」 秋良さんは右手を挙げてアピール。啓介さんは深々と、観客に向かって大きくお辞儀をした。 『…あの!!』 『??』 『どうしたの?金魚ちゃん?』 僕は《チャンスはここしかない!》と突然頭に閃き、その勢いで会話に飛び入った。 『この男装衣装だけじゃなくて…私が瀬ヶ池の街を歩く時に普段着てた洋服ぜーんぶ、あのお兄さん達の経営するお店にオーダーメイドして作ってもらってたんです』 『オーダーメイドなの!?全部!?…凄いね!』 僕の言う《チャンス》…それは《恩返し》。つまり《歩く広告塔》のことだ。 実は…僕はずっと、この使命に悩んでた。いつこの使命が果たせるのか…恩返しができるのか…って。 「何てお店ー?」 「お店の名前教えてー」 やった!観客の女の子らが《恩返し》に飛び付いてきてくれた! 僕はゆっくりと立ち上がった。 『…お店の名前は【Posi-Stylish/Japan】《ポジ‐スタイリッシュ/ジャパン》って言うの!』 やっと、とりあえず1つ恩返しができる…それが凄く嬉しくて、僕は満面の笑顔と大きな声で、観客の皆にそれを教えた。 『あ…お店って言っても、店舗を構えてるとかじゃなくて、主にネット販売だから、みんなサイトやモバイルで調べてみ…』 「そのピアスはー?」 「ピアス買ったお店知りたーい」 えっ!?あ…ピアス? 『えっと…この《硝子の金魚ピアス》は【Genomus.】《ゲノムス》ってお店で…あっ!こっちは《弥永町》ってところに実際にあるお店で買えます』 「えっ!?買えるの!?」 「買えるの!?金魚ちゃんのピアス!?」 「そのピアス欲しい!!絶対買う!!」 「もう一回お店の名前教えてー」 あーっ!!しまったーぁ!! …なんで僕…勢いで『買えます』なんて付け加えて言ってしまったんだろう…ほんとは買えないのに…あぁ。
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