女装と復讐‐躍進編‐

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鈴ちゃんも立ち上がり、僕のピアスを覗き込んだ。 『みんな見たことないかも?だけど…ほんとにこのピアス、間近で見るとね…精巧に細かーく出来てて、凄く可愛い2匹の金魚ピアスなの!』 『そ、それとね…この私のヘアカットは、アン…』 「知ってるー」 「アンナさんの美容院ー」 …アンナさんのお店に話を振って、話題を変えようとしたら…みんな知ってた…。 『皆さん、金魚ちゃんがお買い物してるお店、解りましたー?』 鈴ちゃんの問い掛けに、反応いまいちの観客の女の子ら。 そりゃ…今聞いただけでは覚えられないし。 『えっと…じゃあ、月曜日の私の《リンリンぶろぐ♪》に、金魚ちゃんのお買い物してるお店の詳細を掲載しますので、興味ある子達はそちらで確認してくださいね』 『…では、お時間がきましたので、この《お喋りコーナー》は終わりでーす』 担当員達がまた、慌ててステージに上がってきてパイプ椅子を回収し、またステージ下へと急ぎ戻る。 『…じゃあ…えっと…』 『はい。私と金魚がそれぞれ、一曲ずつ歌って終わりです』 詩織が鈴ちゃんの司会進行をサポートする。 『詩織ちゃんありがとう。ではまたお二人さん、最後の2曲…宜しくお願いします』 そう言って僕らに手を振り、鈴ちゃんもステージを下りた。 『では、私が先に歌いまーす』 詩織がステージの真ん中に立った。僕は下がって秋良さんの隣へと移動する。 『金魚。俺らの商売の紹介、サンキューな』 僕は笑顔で秋良さんに、うんと頷いて返した。秋良さんはギターを奏で始める。 詩織が歌うのは《the brilliant green》の代表的名曲。 ♪大きな曲がり角を 曲がったなら走り出そう とまどうことはもうやめて…♪ 詩織の歌声に、聞いてる僕もなんか落ち着く…。 やっぱり詩織には、こういう優しい感じのゆったりとした曲のほうが合うと思う。詩織だってハードなロックより、こういう曲を歌いたかったんじゃないかな。 ♪Love that's waiting for me Love that's waiting for you そこから流れて行けるような 世界を見つけたい There will be love there There will be love there いつかは 誰かのために 生きていたい…♪ 『…ありがとうございました』 観客に向かってお辞儀をする詩織。観客の女の子らからもたくさんの拍手。 さぁて…次は僕の番。
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