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9月の第3土曜日。僕は持っている中で一番のシャツを着込み、一番お気に入りのジーパンを穿いて外出の準備をした。
もうすぐ午後1時。独り暮らしのアパートを出て駅まで徒歩15分…電車に乗ってあの街へと向かう。
朝のラッシュなんかに比べたら随分空いてるように思える電車内。入り口の扉のすぐ脇に立ち、扉の窓から見える、流れてゆくビルや建物の景色をぼーっと眺めてる。
『ちょ…ねぇ、あれ!あのドアの横に立ってるの《瀬ヶ池のメダカ》じゃない!?』
『うわぁー本当だ…メダカだ!』
背後に聞こえる女の子同士のヒソヒソ話…。瀬ヶ池のメダカ…それは僕の事だ。
誰が最初に僕にこんなニックネームを付けたのかは知らないけど、僕はこんな呼ばれ方で有名になってしまった…。
『メダカにナンパされたことある?』
『勿論あるある!もう3回も声掛けられたし』
『うゎ…だよねー。私も3回。けど私は無理無理。背なんか私よりも低いし着てる服も超ダサ過ぎだし…』
ぼ…僕が何度か声を掛けた女の子!?…耳に侵入してきたそれに、一瞬驚いて全身がビクッ!!と反応する。
『…だよねー。だいたい、瀬ヶ池で遊んでる女の子だったら最低1回は声掛けられてるよねー』
『今からナンパしに行くのかな』
『うん…だよ。絶対。本人は自分がいつまでナンパしてても一生無理なんだってこと、自覚してないんだろうねー。バカだねー…ふふっ』
『ねぇ、つかもう止めようよ。本人に聞かれたらヤバいよ…』
『あ…だね。つかそういえばさ、今度の合コンって、美穂何着てく?』
丸聞こえだっての。《一生無理》という言葉が心臓に突き刺さる…。
僕だって自分の夢の実現化の為に一生懸命だったんだ!初めて瀬ヶ池の駅に降り立った時、そりゃもう全身がガタガタ震えたよ!
目の前を行き交う女の子が全員、女の子のファッション雑誌に載ってるような、あの綺麗なモデル達にしか見えなかったよ!!全員だよ!!
あの日、改札口を出て3秒で《やっぱり無理だ》と思った…。女の子らのレベルが違い過ぎる…僕の生まれ育った田舎には、こんなに可愛くて綺麗でお洒落な女の子は一人も居ないよ!
そんなハイレベルな女の子が今、目の前に何人居る!?…いや…少なくとも1000人は居る!!凄い!!さすがはファッションと流行の発信地…早瀬ヶ池!
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