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僕は隙を見てコソーリと振り返った。ヒソヒソ話をしていた二人の女の子をチラ見で確認する…。
一人は袖のない真珠色のワンピースに…これってミュールってやつ?
もう一人は濃いめのピンクの上衣キャミソールに灰色の超マイクロミニのホットパンツ…で、これもミュール?
…どちらの女の子も、明茶色の長い髪を巻き巻きふわふわヘア。あの整った顔も…びっくりするような細身も…白くて長い脚も…かなりの高得点いけるっぽい。
あんな凄い女の子らに声を掛けてたなんて…覚えてない。
僕はチラ見確認してたことがバレないように、すぐに視線を窓の向こうの景色へと戻した。この間…1秒未満。
だけど、こんなハイレベルな女の子でさえも、瀬ヶ池駅に着けばごろごろ、星の数ほどいる。僕もそろそろ見慣れてきたかな…綺麗だったり可愛かったりって女の子にも。
電車内に軽快なメロディが鳴り響き、アナウンスが流れた。
『♪…お客様にご案内申し上げます…間もなく早瀬ヶ池…早瀬ヶ池駅に到着致します…』
駅に着き、6両編成の電車の扉が開くと、まるで決壊した堤防のように、ホームへと乗客がどっと溢れ出た。
僕もそれに圧し流されるように電車を降りたけど、さっきのヒソヒソ話の女の子らも、もう何処に行ったかも分からない…まぁいいけど。
僕はその人の流れを最後尾から追うように、階段を降りて改札口へと向かう。人々の靴音がバタバタバタバタと騒がしく轟き響く中…。
『あ…瀬ヶ池のメダカ!』
どこからか、そんな小声が聞こえてきても無視無視…立ち止まらず、その勢いのまま改札口を出た。
しばらく歩き、駅東口へ向かう途中のだだっ広いロビーの真ん中で、僕は視線を落としながらピタリと立ち止まった。
あの初めての日と同じように、僕の目の前を…横を…背後を…髪を整え、お洒落で身を固めた女の子達が行き交う…何百人と行き交う。
どうせ僕を見て、心の中では嘲笑っているんだろ?瀬ヶ池のメダカだ…バカだよねー…一生モテない君やってなよー…そう思いながらクスクス、クスクスとさ…。
今まで、一度も考え付かなかった想いが心に火を着けた…。
まるで僕は戦場の最前線の真っ只中に居る…そんな気がした。この街には僕の味方なんかいない…周りは敵だらけだ…!!
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