女装と復讐‐発起編‐

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もう僕の心は、どす黒い疑心に包まれ侵されていた…。 5月から9月の今日まで、ずっと続けてきた、気になった女の子への《声掛け》…ナンパと言われればそうかもしれない。けれど自分では、もっと純粋なものだと思っていた。 なんか、もう今日は声掛けとかする気が無くなった…完全に失せた。 あぁそうだよ…どうせ僕は背が低いよ!どうせ黒ぶち眼鏡小僧だよ!どうせ服装も髪型も田舎者そのまんまでダサいよ!!…可愛い彼女とか夢のまた夢…どうせ僕は一生モテないんだろうよ!! せっかく今来たばかりだけど、駅構内から出ることもなくこのまま、また電車に乗って帰ってやろうかとも思った。 あ…そうだ、ラーメン屋…。 声掛けの日は、いつも必ず同じラーメン屋で腹を満たして、それから声掛けをしてた。今日だってそうだ。昼飯、何も食ってない。 そうだよな。せっかく来たんだし、あのラーメン屋に寄ってから帰ってもバチは当たらないはずだ。うん…とりあえず、ラーメン屋に行こうか…。 全身に、お洒落な女の子らのキツい視線を目一杯浴びながら、僕は駅を出てラーメン屋へと向かった…畜生。 のれんを潜り、いつもの古めかしいラーメン屋に入るなり、僕は全身に衝撃を受けた。この4ヶ月半で初めて見る《満席状態!!》…そりゃそうかな。店は古いけど、ここのラーメンは本当に美味いもんな…。 …仕方ない。僕はくるっと振り返り、店を出ようとした。すると…。 『ちょっと!そこのお兄ちゃん!ほら!ここ!空いてるわよ!』 カウンター席に座り、店の旦那さんと何やら話をしながら時々ラーメンをすする、その着物姿の女性…んっ!? 違う!!今、僕を呼び止め、手招きしてたのは着物姿の…オカマのおっさんだ!! 僕はそろりそろりと、そのオカマのおっさんの隣に進み座る…。 『はいよ。とんこつ一丁』 注文したとんこつラーメンが来た。割り箸を割って、早速食べ始める。 『ねぇ清ちゃん、最近来てくれないから淋しい思いしてるのよぉ。うちのお店来てよぉ』 『だから…うちのカミさんがさぁ…』 お店?…聞こえてくる話の内容からすると、どうやらこのオカマのおっさん、おかまバーの店長ぽい。つか化粧の匂いが横からプンプンする…うぇ。 ラーメンを食べていれば、当然眼鏡が曇り始める。僕は眼鏡を外してカウンターの上に置いた。
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