花と娘と私と彼女

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とある村に住んでいる、可憐と評判の娘がいました。 その娘はいつも笑顔を絶やすことがありません。 けれど、旅人がやってきて娘をみて言いました。 「気味が悪い娘だ、泣きも怒りも落ち込みもしないなんて」 村の人々は怒り、その旅人を村から叩きだしました。 娘はまだ笑っています。 私はその娘が好きでした。 ある日娘の母親が死んでしまいました。それはそれは酷い事件で、口に出すのも恐ろしいようなおぞましい死に様だったそうです。 娘はいつもどおりでした。 いつも通り笑っていました。 私は娘に赤い綺麗な花をあげました。娘は笑って受け取ってくれました。 娘は私にこう言いました。 「私は探し物をしています」 「探し物?何を探しているのですか?」 「綺麗な花です。あなたに頂いたこの花よりももっともっと綺麗な」 私は娘の力になりたかったのです。 なので一緒に探すことにしました。その花を。 まず私たちは花が沢山ありそうな広い原っぱに行きました。 「ここにはないわ。もっと狭い所にあるのよ」 次に私たちは花があまりなさそうな町に出ました。 「近いけれどここにはないわ。もっと暗い所に咲くんじゃないかしら」 次に私たちは狭くて暗い都会に出ました。 「とても近いわ。そもそもこの国が咲きにくい環境なんじゃないかしら」 それで私たちは海外に行きました。 狭くて暗い、小さな国へ。 そこはとても綺麗な花が咲きそうな場所ではありませんでした。 それどころか雑草の一つもなさそうでした。 しかし娘はしばらくその国をうろつくと、嬉しそうに笑い、いいえ、彼女はいつも笑っているのですが、さらににこやかにしていたのです。 「あったわ、これよ、ほら、きれいなはな!」 娘はかけより、花だというものに触れ愛でていました。
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