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とある世界で、有名な宝石が一つある。
その名は、「アンジェリア」。
語源はジュエリー、宝石で「ない」ということをもじった言葉。
アンジェリアを実際みたものはいない。
それなのになぜかアンジェリアの噂は流れた。
アンジェリアは青い。
アンジェリアは赤い。
アンジェリアは白い。
アンジェリアは黒い。
アンジェリアは虹色。
アンジェリアは堅い。
アンジェリアは脆い。
アンジェリアは丸い。四角い。厚い。薄い。三角。長方形。台形。ひし形。長い。短い。厳しい。優しい。怖い。熱い。冷たい。気味が悪い。落ち着く。ガラス。プラチナ。有機物。無機物。存在する。存在しない。
とある1人の男が、アンジェリアをこう表現した。
「アンジェリアは人間だ。足がある。手がある。目がある」
それを聞いた乞食がこう嘲笑し言った。
「はは、それなら豚も犬も猫もアンジェリアだな、おい」
それはただの揚げ足取りだった。だがそれでも男を怒らせるには十分だった。
男は怒りに身を震わせながら乞食に罵声を浴びせ立ち去った。
乞食は笑った。
負け惜しみだ、と。
数日後、その男が行方不明になった。
男には犬が一匹いるだけだった。近所の者が餌をやっていない様子の男の家をいぶかしんで通報したのだ。
警察は捜索したが一向に見つかる気配はなく、新聞にはこう評された。
「アンジェリアの呪い」だと。
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