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「ちょってアンタここから埼玉の電車は何時出るんだい?」
おかさんは毎日同じ質問を私に投げかけてくる。勿論答えもいつも同じ。
「三時過ぎにはバスが来るので、皆さんと一緒に帰りましょうね」
否定せず、おかさんの気持ちを受け入れ、家に帰れる事を伝えると落ち着くのです。
これを、デイサービス(通所介護福祉施設)に居る間は、何度となく繰り返し一日が終わります。
おかさんは私の隣に座り、たまたま私と話をしていた利用者 山岸 ツル さんとの話に入りこんでくる。
ツ「明日は病院に行く日なんだ」
私「混んでいないといいですね」
お「私も明日、病院行かないといけないんだよ」
おかさんは明日もデイを利用の予定です。
私「明日は病院に何しに行くんですか?」と聞くと。
お「踊り踊らなきゃいけないよな。ドジョウすくいでもやってみるよ。あははは」
不思議と場が和やかになり、ツルさんまで笑い出す。
ツ「んじゃオラもいくよ。おはぎ作っとくからなぁ」
話が噛み合わないようだけど、二人の中では意気投合している。
その後も片方は踊りについて、片方はおはぎについて熱く語り合う。
いつの間にか昼休みは終わり、他利用者がベットから起きてくると、自然と話は終わり、各自のテーブルに戻り、お茶を飲み始める。その頃には、先程あんなに仲良く(?)おしゃべりしていた相手の顔さえ忘れている。
毎回、始めまして。
いつも新鮮。
認知症の方の出会いは儚いが故に、一度の交わりは恋人同士よりも深い。
私達、職員はそんな彼らの斬新な生き方を毎日、微笑ましくも丁寧に観察していく。
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