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またしても静まり返る店内。どこからか流れるラジオらしき音声が虚しく響いています。
マスターと話してた美樹ちゃんが、こちらの静寂に気付き「どしたの?」と聞いてきました。
さすがに「いや何かね?碧くん、美樹ちゃんの事好きなんだって」とは言えず……
「な!なんでもないよ!……うん、ね?慎吾くん?」
瞬時に話し掛ける相手を選別し、声をかけます。いや、平井先生はなんか困ったような驚いたような顔で玉木さんを見つめてますし、玉木さんは玉木さんでまだ口ぱくぱくしてますし……面白くないのに。
そして碧くんは顔を真っ赤にし、頭がショートしているようです。
「ふぅん…………まこちゃんさ……」
ギクっ!あの怪しい目は絶対何かを疑ってる目だ。今ならわかる……美樹ちゃんの持つ情報量の多さ。間違いなく、この洞察力の賜物でしょうね。
「な、なに?」
すると、わたしの横を仰ぐ美樹ちゃん。
「その子が噂の碧くんでしょぉ?紹介してよ」
「そ!っうだね!じゃあn.」
美樹ちゃんに言われ伸ばした手を遮り、「あのっ」と口を開く碧くん。もう目が怖いくらい美樹ちゃんに向けられています。
「間宮さんの家で居候させてもらってますっ!柊碧です!こちらの方は玉木さんと言って僕と間宮さんの関係を繋げてくれた職員さんです!」
「へぇ、柊くんって言うんだ……まこちゃんの家に……へぇ」
碧くん発、突然の雑な自己紹介は要所要所で詰めが甘く、正直「おまえ!」と止めたかったです。
あまりその辺のこと美樹ちゃんには知られたくないので……
「あぁ!そう言えば平井先生食べてますか?わたしの奢りですよ!こんなこと、滅多にないんですから、じゃんじゃん食べちゃってください!」
ふぅ……何とか話の脱線に成功したかな?まったく、楽な仕事じゃないよっ!
「そうです!真琴様!」
玉木……おまえ!少し黙っててください!
プイっとわざとらしくそっぽを向き、再度手に持った明太子パスタを食べはじめます。
「それがですね?間宮さん」
じっとお皿を見つめていた平井先生が久しぶりに口を開きました。
「実を言うと……コレ食べられないんです」
…………はぁぁぁ?どゆことですか?
「この……パッパッて振られてる海苔がですね……私食べられないじゃないですか?」
…………えぇぇぇぇ?何ですか?その「知ってますよね?」的な言い方!しかもあんなにメニュー見てたのにソレを伏せていた意味がわかりません。
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